カルカッソンヌ

以前訪れたカルカッソンヌには、城壁に囲まれた中世の町が残されている。現在の市街地から15分ぐらい歩いただろうか....川のむこうの小高い丘に、石の壁で囲まれた、夢のようなお城が見えてくる。

その石の壁は、近付くにつれ、ディティールを表し、現実のものとなる。ある部分は崩れ、ある部分は積み直され、それらが歴史の一部であることを否応なく伝えてくる。積み上げられた石の一つひとつが、歴史を語るものであると分かってくると、訪れた人は、その一つひとつの石を、直に触れなければならないような、義務感めいたものを感じるかもしれない。

石の積み方は、様々である。戦争によって崩れ、急いで積み直した部分は荒い。その時の城壁内の慌てた様子を想像することもできたりする。

歴史の教科書に書かれていることは、本当に一部のことなんだと実感する。

言葉や文字で伝えられないことを、そこではその城壁が伝えてくれている。そして人々は、それらを見て、歴史を学んでいく。こういった歴史を学ぶ場が、今の日本の何処にあるのだろうか...と考えたりもする。一般的に、日本では歴史感覚が育ちにくいのかもしれない...だとするなら、モダニズムもポストモダニズムも、本当の意味で理解されていないのかもしれない...。

カルカッソンヌの城壁の内側では、いまだに数千人の人が生活をしているそうだ。

 

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