ウルの住宅

下の図は、ある住宅の平面図と断面図です。まん中の中庭を取り囲むように、仕事部屋、応接室、使用人室、台所、トイレが配置されています。2階は個室になっているようです。いわゆるコートハウス方式の住宅で、外部からのプライバシーを守る必要のある都市型住宅の一例ともいえましょう。
ただ、この住宅の構造ですが、組石(そせき)造で、素材はレンガです(それも日干レンガ...)。
そう、この住宅は、紀元前1800年頃(今から3800年前!!)の古代メソポタミア地方の住宅なのです。
平面図と断面図を見ているぶんには、現代のものと言っても、そんなに違和感がないんじゃないでしょうか? そういう意味では西洋の住宅のプランニングは、ここ数千年、あまり変わっていないのかもしれませんね。
もちろん設備は全然ちがいますよ。井戸から水道へ、薪からガスや電気へ、トイレは...当時から水洗だったかもしれませんが...。

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太陽エネルギーの利用

最近、太陽光発電付き住宅などがあって、結構人気らしい。屋根に発電能力のある素材を使い、住宅内で使われるエネルギーをまかなうというものだ。ハウジングメーカーからも、そういったタイプのものが発売されている。
こういった住宅を取得する際には、国の方から補助金が出る。結構倍率は高いらしい。
問題は、耐用年限だと思う。年月が経つにつれて、当然発電能力は、落ちていくはずである。初期投資の設備費用はバカにならないが、耐用年限内にちゃんとペイできるのだろうか...補助金も出るし、計算上は多分OKなんだろう。以前流行った太陽熱温水器の場合は、ほとんどトントンであったような気がするのだが...。
現在の太陽光発電住宅が10年目を迎える頃には、はっきりとしたモニタリング結果が出ると思うのだが...。
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家相の話

皆さんは、家相を気にされますか? 昨今、結構占いがはやってたり、「風水」の本が売れてたりしてます。
日本の家相は、もともと中国から伝わってきたもので、鬼門が北東の方角だったりするのは、内陸に位置する都にとって、脅威となる季節風や蛮族などの方向を示している。という説もあります。日本にとっても北東は、季節風や蝦夷の方角と一致し、鬼門とすることに、違和感がなかったのかもしれません。
そういったことを考えると、家相は、当時の「環境工学」であり「防衛都市工学」と考えることができるでしょう。
「仏壇は東向きか西向きがいい」なんていうのは寒気を防ぎ、採光をとるプランニングを成立させる、立派な環境工学です。
一方防衛都市工学としては、鬼門の方角に結界をつくることになります。京の都の北東に賀茂神社を、その先に比叡山を、といった具合です。地方都市においてもこうした結界配置が見られたりもします。皆さんの町ではいかがでしょう?
こうした家相は、江戸時代に最盛期を向かえるのですが、◯◯流といった、流派ができ、互いに勢力を競い合ったことから、「こうしたら金持ちになれる」的な、ちょっと無理した家相も誕生したりして、だんだん廃れていったりもします。
現代においての家相の受け入れかたですが、まあ、理に適ったものは、受け入れ、そうでないものは、少し考えてみる...ぐらいのスタンスの方が、気が楽だと思います。当時と環境も大分変わってきています。ビル風が発生したり、ヒートアイランドで風向きさえも変わったりしている時代です。またその時代に、高層建築物に対しての家相もなかったでしょうから。
そういう意味では、現代には、現代の理に適った家相が、必要なのかもしれません。
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少しだけバリアフリーの話

バリアフリーのバリアは「障壁」のことで、フリーは「自由」ですから、バリアフリーとは「障壁を取り払う」といった意味になります。
一般的にバリアフリー住宅とは、障害者や高齢者ができるだけ自分で活動でき、安全に住めるように、住宅のなかの障壁を無くし、手すりなどの設置を心がけると共に、一緒に住む家族の方も住みやすく、介助しやすくなった住宅のことです。具体的には
・高齢者・障害者スペースを安全・快適な位置に置く。
・室内の障壁(主として段差)を無くする。
・高齢者・障害者の使い易い設備を設ける。
・介助が必要な場合には、それらが行いやすくなっている。
といったところになるでしょう。
でも、そういった物理的なことだけでなく、精神的なバリアに対するアイデアも本当は必要です。車いすの人と健常者では、視線の高さが違います。これは、健常者にとって開放感のある窓でも、車いすの人には閉鎖感を感じさせることがあるということです。健常者にとって、安全を確保できる視野を、車いすの人は確保できないことが多々あります。こういったストレスのつみ重なりが、精神面に大きな影響を与えることになります。
こういった視線に関するストレスの問題は、子供に対しても当てはめることができます。
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結露の話

名古屋では、昨日大雪が降りました。寒くなりましたね~。どこのご家庭も暖房を入れていることと思います。もうテレビなどで随分と紹介されていますから、石油ストーブの上にやかんを乗せてる方は少ないと思いますが...灯油やガスのように有機物を燃やして暖を採る場合、水蒸気が発生しますから、それだけでも結露の原因となります。最近の気密住宅では、空気の逃げ場のない分、しっかりとした対策(断熱を含め)を考えておかないと、激しい結露にみまわれることになります。
ガラス面やサッシ部分の結露は、それに応じたサッシを使うことになります。ペアガラス・断熱材を挟んだサッシ・プラスチック製のサッシ等、いろいろ出ていますので、好みと予算に応じて選ぶことになります。引き違いのサッシの場合、従来のクレセントによる戸締りですと、すき間風が入り、その部分の温度が低下します。しっかりした金物のついたものを選ばなければなりません。
壁の結露対策としては、まず十分な断熱材を入れて、室内の空気が壁に当たった際、冷やされないようにすることです。鉄骨住宅の場合、鉄骨部分の断熱材が薄くなりがちで、そこの部分が結露しやすくなり、カビが発生することもありますから、十分に注意してください。
暖められた空気が、壁際で停滞しないようにすることも大事です。家具の裏側などは空気が停滞しやすいので、ある程度間隔を空けて置いて下さい。押入や収納の中なども停滞しますので、時々開放してあげるとよいでしょう。壁やサッシの方から空気を対流させてやるのも一つの方法です。
寒い地方に行くと、サッシには結露防止用のヒーターが下に設置されていたりもします。それほど冷え込まない地方でも、暖房やエアコン設備を設置する際に、結露をしにくい形で設置することも大切なポイントとなります。
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高気密住宅と健康住宅

最近の住宅は、高気密住宅が中心です。十分な断熱材を施し、室内側板材の裏に気密シートを貼り(表面に塩ビシートを貼っただけのものは効果ありません)、気密サッシを使い、コンセントや配管周りに気を配り...。かつての木造住宅/木造サッシに比べれば、3倍とか5倍の気密性が得られています。それだけ、冷暖房のエネルギーロスが少ないということです。
一方、かつての木造住宅は、すき間風が十分に得られていた(?)ため、換気の必要がほとんどありませんでした。現在の気密住宅は、1時間に1~2回室内の空気を入れ替えてやる必要があります。窓を開けて入れ替えてもいいのですが、冷暖房のエネルギーロスを生じるだけなので、熱交換型の換気扇を使わなければなりません。でも結構モーターの音が気になったりします。ですから、寝室に換気扇を付けず、ドアにガラリなどを付けて、家全体を単体の換気扇によって、24時間換気し続けるといった方法が用いられたりもします(音のプライバシーに問題が生じますが...) 。
また、気密化によって、有害物質の人体に与える影響は増大しています。最近問題になっていた、接着剤に含まれるホルムアルデヒドなどは、分解性の高い物質なのですが、気密化によって室外への逃げ道がなく、室内側の濃度を高めてしまいます。また、空気を循環させるシステムも、建築物のいろいろな所の空気を運んできてしまい(時には、床下とか屋根裏とか...)、思わぬ物質の影響を受けたりすることもあります。
少し話は変わりますが、輸入住宅の断面などを見ていると、気密性のことは十分に考慮してあるのに、一旦壁内に入った水分の逃げ場が考慮されていないように感じたりもします。
なんか、こう考えるといわゆる気密住宅というのも、イマイチだな~と思えてきますよね。
プラスαのアイデアが必要となるのでしょう。
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木造とバリアフリー

木造建築は、住む人に対して、やさしい住まいを提供してくれます。湿度のコントロールをしてくれて、肌触りがよく、歩き心地がよく、転んでもケガをしにくい等。
これらをコンクリートの住宅で得るためには、それなりの工夫が必要となってきますが、木造のように簡単にはいきません。
この木造建築のよさは、高齢者等のバリアを持った人達にたいしても、大切なファクターとなります。
ただしバリアフリーを考える場合には、木造ならではの工夫も必要となってきます。
たとえば、外部との段差を無くすためにテラス等を設けたり、斜路を用いる時などは、床下換気のための開口部がとりにくくなるので、床下換気に対する工夫が必要となります。
木造建築にとって、床下換気は非常に重要です。健康住宅化を考え、シロアリ駆除剤を使用しない場合はなおさら重要となります。
これらのファクターは、互いに関係しあっているので、うまくバランスをとることが大切です。
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再び、木造の話3

昨日、話しかけた欠点というのは、遮音のことです。特に、1階-2階間の上下間の音を防ぐのは、なかなか難しいものがあります。重量衝撃音は勿論のこと、2階の床がフローリングだったりすると軽量衝撃音も難しくなります。防音材を二重にして、床板間にゴムと硬質材をサンドイッチし、剛性が出るように張り付けても満足いく結果は得られません。勿論、一般の木造住宅に比べたら、圧倒的に遮音性は高いのですが、二世代住宅/三世代住宅の場合には、遮音性を今の標準レベルで考えては、不十分でしょう。高齢者が階下に住む場合がほとんどなので、この点をクリアすることが、木造住宅の今後の課題となるでしょう。
また、木材は、それ自体が、乾燥等によって収縮し、音を発する場合もあります。集成材を使った場合には、一般の木材よりは多少有利でしょうが...
木造の遮音に関して、いま結構いけそうなアイデアを思い付いているので、次回の設計で、試してみようと考えています。
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再び、木造の話2

昨日のアップが、事情によりできなっかたので、一緒にアップします。
構造用集成材を使うメリットは、構造がシンプルになることの他に、柱と柱の間隔を広くとれるので、自由な間取りをつくることがあげられるでしょう。勿論、鉄骨住宅でも可能でしょうが、以前言いましたように、鉄骨には結露の問題が、ついてまわります。ちゃんと柱の部分にも断熱材を入れればよいのですが、ハウジングメーカーレベルで、そうなっているのを見かけません。柱のまわりが太くなって、カッコわるくなってしまうから...。
コンクリート住宅も、大きな部屋をつくるのは、なかなかコストがかさみます。ツーバイフォーは、大きな部屋はできないし、開口も限られてきます。
そうやって考えてくると、構造用集成材を使うメリットは、非常に高いものといえるでしょう。
でも、木造住宅の持っている、ある欠点は、それだけでは解決しません。その欠点とは...それは明日お話しします。
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再び、木造の話

京都とか奈良にいって、古いお寺を眺めた時に、建てられた時代によって、随分と木材の太さが違うのに、気付かれたことは、あるでしょうか?
概ね、古い時代のものほど、太い木材を使っています(勿論、建物の規模にもよりますが...)。
塔の軒裏などを見ると、その違いが結構はっきりと確認することができます。「でかい材料使っているな~」と思わせるのは、やはり最古の木造建築物である法隆寺でしょう。木材が太く、そのかわり組み合わせる材料が少なく、非常にスッキリした感じがします。
その後の薬師寺あたりになってくると、材料が細くなり、苦労して部材を組み合わせている様子がうかがえます。もっと後の時代になってくると、その組み合わせ方も簡略化し、それはそれでスッキリ見えてきます。
奈良時代や平安時代に比べて、現在は、もっと木材が細くなっています。そりゃそうですよね、そんな太い木は、もう日本では入手できないですもんね。法隆寺の木材なんて、樹齢1000年以上といわれています。そりゃ...無理です。
ですから、現代の木造は、細い木材を上手に組み合わせて、建物を作ることになります。いかに、組み合わせの部分の力の流れをスムースにするかが、大切なポイントになってくるわけです。
最近では、構造用集成材というのがあります。幾つかの木材を接着剤で貼りあわせて、太い一本の木材にしたものです。木造の良い面を継承しつつ、シンプルな構造が組めて、なかなか面白い存在です。これからもっと増えてくるとおもいます。
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